そして彼の自信は、たこ焼も料理として完成させたい、
という強い思いへふくらんでい った。
普通、たこ料理専門店として看板をあげているのだから、
わざわざたこ焼にまで手 を広げなくてもいいように、
素人は思うだろう。
たこ焼を愛する私でさえ、それは邪道に思えてしまう。
実は、たこ茶屋をオープンした当初、
なんと彼は自分で焼くたこ焼をメニューに出していたというのだ。
「究極のたこ焼」への試行錯誤もこの時流に乗った、
突然の思いつきではなかったのである。
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だからここのおしながきには、たこ焼だけでも、十数種類バリエーションが並ぶ。
梅しそ焼、ドラゴン焼、そして究極のたこ焼。
現状に安住しない箱部氏の意気込みが感じられる。
おそらく私が弟子なら、師匠、そこまでしなくても・・と
口応えしているかもしれない。
もちろんコナにもこだわる。小麦粉の種類、熟成の度合い、
玉子との相性、入れるタイミング、そして最も気をつかうだし汁。
料理はバランス、どんな食材にもたえうる現在のコナを完成してからは、
ますますいろんな具材に挑戦してきた。
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いよいよタコの扱いである。
水分のこと、うまみを逃さない工夫。もちろん歯ごたえ。
これらの要素をバランスよく検討した結果。
答えは、たこ天。タコをゆがいて、余分な水分を出し、それに衣をつけて揚げる。
この小さなたこの天ぷらが、究極のたこ焼の核心となった。
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こうなれば、たこ焼もたこ料理の仲間入りである。
何ともぜいたくな、ふだんとはちがうたこ焼。
そしてタコそのものの味わいに舌鼓をうちながら、
料理としてのたこ焼が、他の食文化に与える大きな可能性について、
光を感じる私であった。
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