☆★☆ たこやきめぐり 第11回 ☆★☆

 
鍋から味から保温器まで 特製のうまさ、ここにあり!
− うまい屋 その3 − 

熊谷 真菜

 「市電が走っていた頃は、そこが停留所で、いま公園になってるとこに松竹と東宝の 映画館があって。夜中まで人いっぱいやったし、映画終わったら、すごい行列でな。 樋いっぱいのたこ焼があっというまになくなるんや。よそのたこ焼を入れてもベチャ ッとするのに、うちのはならへん。なんでか知らんけど、ようできてるやろ」。

 鋳掛け屋のおじさんに特注でつくらせたという保温器は、客を待たせないための アイデアだった。銅の輝きが、使い込んだ鍋とともに、店の風格をひきたてる。


 喜多さんが特攻隊だったこと、その後音楽学校に通ったり、俳優をめざしたことも あったとか、ダンスもプロ級、その他もっとすごい事実も聞かせてもらった。たこ焼 へのこだわりも納得できる、喜多さんのユニークかつ素晴らしい経歴だ。たこ焼食べ ながら、こんなにおいしい話が聞けるとは。隊員ともども大感激だった。


 そういえばもう10年になるが、私の結婚パーティのとき、バナナホールまでたこ焼 200人分を運んでもらったことがある。ユーミンさながら花嫁が踊り歌ったあとのお 口直しに、舟にのったたこ焼は好評だった。そのとき一緒に届けてくださった下の 息子さんは、今はバリバリのスタジオミュージシャンとして、父親の夢の半分を受け 持っている。