☆★☆ たこやきめぐり 第25回 ☆★☆

水無瀬名物、本当のたこ焼
− たこ勇 その1 −

熊谷真菜
 上の子が11歳になったので、結婚して12年たつことになる。なぜか最初、同居を望んだ。嫁ぎ先は阪急京都線の水無瀬という駅で降りる。後鳥羽上皇とか、百人一首の舞台とか、確かに歴史もあって自然の豊かな町だったが、住所を見てびっくりした。
たこ焼き
店
 大阪府三島郡島本町。

大阪に「郡」なんてあるんですか。いやまだひとつだけ「村」も残ってますよ。

西宮に生まれ育った私としては、住所だけで結婚をやめようかと思った。おまけに電話番号は075。これは京都の局番である。京都からも大阪からでも市外局番が必要になる。東京の人たちにも、この説明をするだけで2分はとられる。

 住めば都とはよく言ったもので、数年たつと西宮が霞んでみえた。水無瀬川では蛍が見られるし、サントリー山崎の工場に選ばれるだけあって、水もおいしい。新幹線に乗るにはJRで15分だし、意外と便利だ。何よりうれしいのは、何もつけないなにわのたこ焼の店があること。

まなさん
たこ焼

 駅前の小さな店だが、たこ勇の看板は、最初から光っていた。ここのシンプルなたこ焼を食べたとき、この町でも許せると思ったほどだ。

 表面カリッとこげめのついた皮をやぶると、なかはトローリと半熟状の小麦で、最後にコリッとタコの歯ごたえ。うまいたこ焼の鉄則をこれほどまでに忠実に、きちんとおさえた店はそうザラにみつけられるものではない。

続く...


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