ひと昔前のことである。大阪府は泉大津で
、神農エイジクンと石田博文クンという19歳
の若者が、吉野屋の牛丼のバイトで出会った
。二人は同い年、意気投合する。もともと周
囲からは「エイジ」、ひろぶみの「ろ」を取
って「ろんちゃん」と呼ばれていたふたり。
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ここで鋭い読者なら、ははー今日の主役は石
田クンだな、なんて思うでしょうが、そこへ
行く前に神農クンの偉業に触れておきたい。
互いに、エイジなんてかっこよすぎるやん、
ということで、石田クンは神農クンを「しん
(神) ちゃん」、神農クンはかわいすぎるや
ん、と石田クンを「ダーちゃん」と新しいニ
ックネームを付けて呼びあうことにしたとい
う。人とはちがう愛称をつけるなんて、二人
の仲のよさを感じさせるエピソードではある
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さて二人の共通点は、たこ焼があんまり好
きではないこと。ところがある日しんちゃん
は、なぜかたこ焼屋を開業すると宣言。それ
から二人は噂のたこ焼屋さんを食べまくり、
この店と決めたモデルのたこ焼を徹底的に研
究する。屋号は「開運」。開運開店の日、石
田クンはしんちゃんの指示通り、近所でたこ
焼を持って走り回ったり、泉大津の駅でおも
むろにたこ焼を食べてみたり、匂いを撒き散
らして、しんちゃんの商売繁盛を助けたのだ。研
究熱心なしんちゃんのたこ焼は、口コミで広
まり、今では行列が絶えない隠れた名店とな
っている。
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それから約8年、ろんちゃん=ダーちゃんこと石田ク
ンであるが、彼も去年の8月にたこ焼屋を開
くことになった。しんちゃんに相談すると、
決して人に言ってはならないという約束で、
焼き方から何もかもをそのまま伝授。そこで
店さがしがはじまる。なんとかいい場所をと、人
通りを数える地道な作業もつづく。泉大津駅
の乗降客は一日2万5000人、鳳駅は4万〜4
万5000人。その鳳駅前のでんでん坂を少し下
がった所に、いい店をみつけた。
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