☆★☆ たこやきめぐり 第20回 ☆★☆

屋台の花、花ある屋台、花も実もある人生
− 三寸屋マルヨシ その1 −

 たこ焼屋にしては、変わった屋号である。以前から出掛けるのを楽しみにしていた店だ。新歌舞伎座のそばの屋台は出世して、奥に腰掛けるスペースもつくられているが、表の鉄板前でねばりたいほどのユニークな演出がある。

 まず、屋台の骨組みというか構造は、江戸期の屋台に近い様相で、創業以来何度も作り直しているものの、新品の雰囲気を出さないようにしてある。ばかでかいものではなく、こじんまりと、半間ぐらいの幅に焼きこんである銅製の鍋がぴたりとおさまる。

お店
たこやき
 主人手書きの短冊が並ぶ。目をひくのが「当店のたこ焼にはかくし味として、ワインを使用いたしております。」

 そのひとことだけでも、よその店とはひと味ちがう何かを感じるものだ。

 さらにメニューがびっしり。ソース、しょうゆ、タルタルソース、カレーソース、ケチャップ、ゆずしょうゆ、レモンしょうゆ、みそしょうゆ、バター味。ソースの種類だけでもこんなに並ぶ。多すぎて迷いそうな人のために、初恋の味〜などキャッチフレーズがついて、笑わせてくれる。

 そして極めつけのPOPが、人形。もうひとつの屋号のように掲げられているのが、「人形のあるたこ焼屋 マルヨシ」。

 私が小さい頃はやっていた、本物の赤ちゃん大のぷっくらしたお人形が、屋台の柱にくっついている。人形付きのたこ焼屋さんなんて前代未聞、これからも出現する可能性は低いはずだ。

 どうしてまた。ご主人の吉田誠良さんにたずねると、「道頓堀にも立ってますやろ。人形置いといたら、ほかの屋台とまちがわんと来てもらえます。なぜワインがはいるか?伊達に入れてはおりません」。

人形
ご主人
 スリムで動きも細やか。昭和11年生まれとは思えないテンポの良さだ。それもそのはず。19歳まで、京山幸枝若師匠についていたプロの浪曲師。そのあとは、洗濯屋、貸しオシボリ業、喫茶店など商売の道に。いずれも先見の明で成功するものの、ギャンブル好きで倒産も繰り返す。

ところが...

続く...


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