☆★☆ たこやきめぐり 第11回 ☆★☆

 
鍋から味から保温器まで 特製のうまさ、ここにあり!
− うまい屋 その1 − 

熊谷 真菜

 どうしても忘れられない店がある。
 こんな書き出しではじめると、何となく落ち着いたバーの紹介記事になって しまいそうだが、私の15年間に渡るたこ焼めぐりの中で、忘れられない店をあげる とするなら、やはり今回の「うまい屋」になるだろう。

 グルメマップの存在さえなかった時代、たこ焼屋さんめざして街をさまよう のだが、夕方屋台で出るたこ焼屋さんは多くても、常設のちゃんとしたお店は まだまだ少なかった。そのうち、しがない大学生の私の勘は、日に日に鋭くなり、 あの角を曲がったら、お店があるかもしれない! という予感は当たるようにな っていた。


 JR天満から天神橋筋を北へ。ふと左に曲がると、天五中崎町通り商店街の 入り口が見えた。小走りに横断歩道を渡る。と、そこにはかなり年期の入った大きな看板が待っていたのである。「大阪名物たこ焼 うまい屋」。この店はいける。そんな直感がうれしかった。が、店先に立つ主人らしきおっちゃんの、がんこそうな雰囲気が目にはいったとたん、それまでの興奮が一気にさめるような、そんな思い出は今もかすかに残っている。


 母親の代から今年で45年目。2代目喜多武俊さんは70歳には見えない若々しさ、そして勢いがある。この勢いに負けてしまうと、いろいろ聞き出そうとしてもむずかしい。本当はすごく優しいおじさんなのに、未熟な私はその優しさを見抜くのに時間がかかった。