☆★☆ たこやきめぐり 第7回 ☆★☆

 
かめばかむほど、味わいおやじ
− 味一 その1 − 

熊谷 真菜

名物おやじ、というのはどこでもいる。

が、なかなか味わいのある名物おやじは少な い。

心斎橋2丁目の筋を御堂筋にぬける、その途中に、最近占い館とたこ焼という 妙な取り合わせの店ができた。それを目印にして、隣りのビルをはいった三軒目、 明石焼の”味一”がきょうのお目当てだ。昭和48年から、とにかくでかいタコ の明石焼の店として、知る人ぞ知る店になっている。

私も何度か一お客として、彼氏などに連れていってもらったことはあるのだが、 デートのついでに取材はできず、おやじとも深く話したことはなかった。主人も たぶん、二人に割ってはいってまで、ウンチクを語るはずはなく、私とおやじの 接点は持てないままだったのだ。

ここのタコは、大きなタコを誇る店の2.5倍はある。 たこ焼のメイン素材となる小麦粉の部分は、まるで脇役でしかない。りっぱな タコにまとわりついているのは、天麩羅の衣も驚くような些少なものだ。

アツアツのあっさりおだしに、軽く浸す。おだしにはお好みで、みつば、しょ うが、ねぎを入れて。一人前はあっという間。


さらに特徴的なのは、並んだ8個のたこ焼が、まったくふぞろいなこと。タコ の形や色がさまざまなら、衣のつき具合もおやじの気分しだいだから、まず球体 は望めないし、ひとつひとつが自己を主張するかのよう。それがまた、うまさを アピールとしているから不思議だ。

ふぞろいなのがいいわあ。

ひとりで感心していると、「糸井さんも同じこと言うてたよ」。コピーライタ ーとして、なんかほめてもらった気分。2皿目は樋口可南子になりきって、食べ たりする。お酒のあと、または次の店へのつなぎに、ふたりでそっと立ち寄るに は、ぴったりのスポットだ。

さて名物おやじ、今年52歳になる朝山三十四(みとし)さんをご紹介しよう。

続く...



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